特定非営利活動法人ツバルオーバービュー

気候変動ニュース

6月1日、米国トランプ大統領がパリ協定の脱退を表明しました。アメリカが国際環境条約から離脱すると聞くと、2001年のG.W.ブッシュ共和党政権による京都議定書交渉を離脱した時のことを思い出す人もいるでしょう。しかし、今回の脱退は、その時の離脱と意味が全く違います。

1. パリ協定はすでに発効している。

2001年に米国が京都議定書交渉を離脱したとき、京都議定書はまだ発効していませんでした。なので、アメリカが交渉から離脱することが可能でした。その結果、当時世界最大の二酸化炭素排出国である米国抜きで、国際社会は京都議定書を発効させなければならないという厳しい現実に直面しました。しかし、国際社会は気候変動問題に対応するため一致団結し、2005年2月に京都議定書は米国抜きで発効しました。

今回のパリ協定の脱退が京都議定書交渉からの離脱と違うのは、パリ協定は2016年11月4日にすでに発効しているという点です。2016年9月3日に、米国は中国とともにパリ協定を批准しており、米国はパリ協定の目標を達成するため対策を進めて行く事を約束した締約国なのです。締約国が協定を脱退するには、同協定の第28条の規定(いわゆる脱退規定)に従わなければならなりません。

 

2.米国がパリ協定を離脱できるのは2020年

パリ協定の脱退規定を見てみると、パリ協定の離脱には4年かかると書かれています。

まず、パリ協定が発効してから3年以降にしか、国連事務総長に脱退の意志を示す書面を提出することができません。パリ協定が発効したのは2016年11月4日ですから、それができるのは、2019年11月4日以降となります。(パリ協定第28条第1項)

そして、正式に脱退するには、国連事務総長に提出した書面が正式に受理されてから早くても1年後になります。すなわち、米国が正式にパリ協定を脱退できるのは、早くても4年後の2020年11月4日ということになります。(パリ協定第28条第2項)

2020年というと、米国トランプ政権の第1期の任期が終わる年です。2020年11月3日には次期米国大統領選挙が実施されるため、正式にパリ協定離脱できる頃には、次の大統領が決っている可能性があります。次期大統領がパリ協定を重視し気候変動対策を積極的に進める人ならば、また米国がパリ協定に戻ってくる可能性が高いと思われます。

 

3.今回の米国脱退騒きは実はあまり大きな影響を及ぼさない

新聞やメディアが米国の脱退のマイナス面を大きく報道されているため、パリ協定は「意味がなくなった」かのような印象を受ける人もいたかもしれませんが、今回の米国のパリ協定脱退はあまり大きな影響を及ぼさないと考えられています。米国の国際交渉への影響力が、中国やインドなどの新興国の台頭で、相対的に落ちていること、またパリ協定の合意を促した再生可能エネルギーの爆発的な普及は止められないからです。

しかし、米国のパリ協定からの脱退は、パリ協定に大きな希望と見いだしている気候変動の大きな影響を受ける島しょ国や将来世代への背信行為であり、トランプ政権がパリ協定からの脱退を撤回するよう、あらゆるチャンネルで働きかけることが必要です。

 

4.残る懸念は、資金拠出の停止

懸念があるとすれば、国連気候変動枠組条約や途上国の気候変動対策や適応策を支援する「緑の気候基金(GCF)」に対して、米国がお金を出さないことを表明していることです。GCFは、2010年に開催されたCOP16で設立が決定した、気候変動枠組条約のもとにつくられた多国間基金です。このGCFに、米国は途上国9カ国を含む43カ国とともに世界全体で103億米ドルの資金を拠出することを約束しています。

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6月末には、すでに理事会によって承認されたツバルを含む43のプロジェクトに対し、総額22億米ドルの支払いが始まりました。しかし、今後米国が資金拠出を止めると、このような事業に対する資金に大きな影響が出る可能性があります。

この資金の問題についても、米国にはもちろんですが、他の国にもすでに表明した金額をきちんと拠出するように働きかけていくことが大事です。

 

2017年7月2日
ツバルオーバービュー 理事 川阪 京子

 

パリ協定脱退規定

外務省(仮訳文)

パリ協定 第二十八条

1 締約国は、この協定が自国について効力を生じた日から三年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この協定から脱退することができる。

2 1に規定する脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した日から一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定されている日に効力効力を生じる。

3 条約から脱退する締約国は、この協定からも脱退したものと見なす。

 

参考文献

・  外務省「(仮訳文)パリ協定」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000151860.pdf

・外務省「緑の気候基金 Green Climate Fund(GCF)」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000123.html

・Green Climate Fund Newsroom“GCF focuses on getting funds flowing” 22 Jun 2017

http://www.greenclimate.fund/-/gcf-focuses-on-getting-funds-flowing