1998年から南太平洋に浮かぶ島国ツバルに軸を置いた活動を行っています。最新ニュースの提供、気候変動防止を主題とした講演会への講師派遣・写真展へのパネル貸し出しを行う他、鹿児島の体験施設「山のツバル」では、スマートな低炭素暮らしの実験に挑戦しています。

気候変動ニュース

Mr. Enele Sopoaga on fishing boat at Funafuti atoll

Mr. Enele Sopoaga on fishing boat at Funafuti atoll

2010年11月29日〜12月10日、メキシコのカンクンで国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催され、ツバル政府からは環境大臣兼副首相のエネレ・ソポアンガ氏が参加された。
メキシコから戻られてすぐのソポアンガ氏に、今回のCOP16の成果と来年のCOP17への展望について、インタビューさせていただいた。

—————————————————————————————
今回カンクンで行われたCOP16は、コペンハーゲンの二の舞になることなく、想定していたよりは成果を上げたと言っていいだろう。なぜならば今回のCOP16で、コペンハーゲンで失速しかけた気候変動問題に対する国際社会の勢いを、多少なりとも盛り返すことができたと感じるからである。しかしながら今回もまた、具体的な行動に直結させるための法的拘束力を持った取り決めはなされず、その部分ではとてもがっかりした。

今回新しく決まった「緑の気候基金」と、京都議定書で運営されている「CDM(クリーン開発メカニズム)活用による適応基金」について、それぞれに今後とも見直し、改善を続けていくべきではあるが、「緑の気候基金」については、今の段階ではこれは基金ではなく単なる書類に過ぎない。法的拘束力を伴って始めて、制度としての力を発揮するだろう。それに対して「CDM活用によるアダプテーションファンド」は、資金が豊富で、今後京都議定書第二約束期間の目標設定に標準を合わせたものにしていけば、さらに効果的な基金となるだろう。

日本に対しては、今回特に国益と国内企業保護を重要視する姿勢が目立った。これは国際社会の進歩を遅らせる要因となり、日本は国際社会に対して非協力的とみなされざるを得ない。ツバルを始め、国際社会は高い先進技術を持つ日本と様々な面で協同したいと強く願っている。日本には、外から傍観するような姿勢を改め、むしろ京都議定書締約国としての誇りを持ち、京都議定書第二約束期間に向けて積極的なリーダーシップを見せてもらいたい。

また日本のみならず、今後中国、アメリカなどの大国を巻き込んでいくことも重要である。この2大国間関係を安定に保ちながら、それぞれに添ったアプローチをしなければならない。まず、中国は先進国としてみなされがちだが、中国は決して先進国ではない。特に内陸部にはその日暮らしの人々が多く住む中国は、むしろ国としてまだ発展の途上にある。中国には発展が必要で、その中国に、他の先進諸国同様の基準や取り組みを強要するのは得策ではない。一方のアメリカは、間違いなく先進国として国際社会をリードする立場を取るべきである。世界の二酸化炭素排出量のほとんどを占めるアメリカと中国の今後の動向はとても重要であり、この2国を議場に巻き込むことは必須である。

最後に来年のCOP17に関して、ツバル政府としても前向きに進展を期待しているが、もっとも期待するのは法的拘束力を持った合意である。法的拘束力なくして方策としての価値はなく、制度に法的拘束力を持たせ、強めることが、気候変動問題に対する国際社会の次なる前進であり、こんなところで立ち往生している時間は我々にはない。
—————————————————————————————

インタビュー担当 北添春菜(現地コーディネーター)