1998年から南太平洋に浮かぶ島国ツバルに軸を置いた活動を行っています。最新ニュースの提供、気候変動防止を主題とした講演会への講師派遣・写真展へのパネル貸し出しを行う他、鹿児島の体験施設「山のツバル」では、スマートな低炭素暮らしの実験に挑戦しています。

気候変動ニュース

COP19では主に以下の点について交渉が進展することが期待されていました。

1,2020年以降の全ての国が参加する新しい枠組みにおける
・各国の削減目標値の深堀り
・2015年合意までの作業計画

2. 気候変動の悪影響によって起る損失と損害に対応するための国際メカニズムの設立3. 途上国への長期的な資金提供2. 気候変動の悪影響によって起る損失と損害に対応するための国際メカニズムの設立

3. 途上国への長期的な資金提供

 

1. 2020年以降の全ての国が参加する新しい枠組みにおいて

2015年に開催されるCOP21で合意することになっている2020年以降の新しい国際的な枠組みの詳細や各国の削減目標の上乗せに関する議論については、新しい国際的な枠組みにおける各国の貢献分(削減量)を、全ての国が、2015年のCOP21より充分前(できる場合は2015年の1月から3月まで)に提出することが決まり、若干議論のスピードを早める道筋をつけたものの、今回は目立った進展はなく、全ては次の会議に先送りとなりました。
[決定事項]ダーバンプラットフォームの更なる前進に関する決定(Further advancing the Durban Platform)
http://unfccc.int/files/meetings/warsaw_nov_2013/decisions/application/pdf/cop19_adp.pdf

全ての国が参加する条約のもとでの、議定書、その他の法的文書、法的な強制力のある合意をCOP21(2015年12月)で採択し、その後、発効を経て、2020年から実施するという流れの中で、

  • ダーバンプラットフォーム特別作業部会に対して、2014年の最初の会議(3月)から、交渉テキスト案に入る要素について更なる検討を進めることを要請。
  • 全ての国が、それぞれこれから決める貢献分(contributions)について国内の準備の開始、もしくは、検討の強化をし、2015年のCOP21より充分余裕を持って、(準備できる国は、2015年最初の3ヶ月間(1月から3月)までに、)提出すること。
  • ダーバンプラットフォーム特別作業部会に対して、全ての国がそれぞれの貢献分を提出する時に出す情報をCOP20までに特定することを要請。

 

2.気候変動の悪影響によって起る損失と損害に対応するための国際メカニズムの設立

気候変動の影響は顕在化しており、今回フィリピンで起ったスーパー台風などの異常気象や、気温の上昇、氷河の後退、土地や森林の劣化、生態系の損失や砂漠化、海水酸性化、海面上昇、土壌の塩類化など長期間に渡って起る気候変動の影響に伴う土地の消失、移住、コミュニティーの崩壊、農産物の収穫量や漁獲高の減少など温室効果ガスの排出削減といった気候変動対策や気候変動の影響に対する適応策では防げない損失や損害があります。

今回、ひとつ前進といえるのは、COP22で見直しすることを条件に、ツバルなど温暖化の悪影響に脆弱な国々が求めていた、これら気候変動の悪影響によって起る損失と損害に対応するための国際メカニズムとそれを運営する執行委員会の設立が決定したことです。今回は、カンクン適応フレームワークの下で、適応委員会と同じく条約の諮問機関として位置づけられることになりました。AOSISが求める損失や損害への補償は大きく反映されませんでしたが、その機能として、包括的なリスク管理の知見や理解を強化するためのデータや情報の収集、ステークホルダ間の対話や調整の強化、資金的技術的な支援を提供するための準備といったものが盛り込まれ、詳細は今後の議論で詰められることになっています。

[決定事項]気候変動の影響によってもたらされる損失と損害のためのワルシャワ国際メカニズムに関する決定(Warsaw international mechanism for loss and damage associated with climate change impacts)

http://unfccc.int/files/meetings/warsaw_nov_2013/decisions/application/pdf/cop19_lossanddamage.pdf

  • COP22(2016年11月から12月開催)で見直しを行うことを条件に、異常気象や遅発性の現象を含む、気候変動に特に影響を受け易い途上国における気候変動の影響に関する損失と損害に対応するため、カンクン適応フレームワークのもとに、損失と損害のためのワルシャワ国際メカニズムを設置する。
  • COPのガイダンスの下機能するワルシャワ国際メカニズムの執行委員会を設置する。
  • 執行委員会に対して、実施報告や提言を行うため、SBSTAとSBIを通じ、COPに年次報告をすることを要請。
  • 暫定措置として、執行委員会は、先進国と途上国の間のバランスを確保しつつ、以下の条約の下部組織からの代表2名から構成されるものとする。適応委員会、後発発展途上国専門グループ、資金に関する常設委員会、技術執行委員会、条約の非附属書I国の国別報告書専門家協議グループ。
  • 事務局長はCOPの議長を相談し、2014年3月までに執行委員会の最初の会議を開催する。会合はオブザーバーにも参加できる。
  • 執行委員会は、SBSTA41とSBI41(2014年12月開催)で検討するために、会議日程などを含む2カ年作業計画を作成する。
  • 執行委員会の構成や提案を行う際などの手続きについてはCOP20(2014年12月開催)で採択するため、SBSTAとSBIで検討を行う。
  • ワルシャワ国際メカニズムの仕組みや機能、効果について、COP22で見直しを行い、適切な決定を行う。

 

3. 途上国への長期的な資金提供

長期資金については、3年前のCOP15では、途上国の排出削減対策を支援するために、先進国の義務として、2020年までに官民合わせて年間約1000億ドル拠出することが合意されていました。COP19では、この資金が確実に拠出されるようにするため、先進国に対し、気候関連資金の額を増やすための最新の戦略や方法についての報告書を2年に一回提出するように要請すること、そして、会議期間中のワークショップ開催と2年に一度気候関連資金についての閣僚級会合を開催することが決まりました。

[決定事項]長期資金作業プログラムに関する決定(Work Programme on long-term finance)

http://unfccc.int/files/meetings/warsaw_nov_2013/decisions/application/pdf/cop19_ltf.pdf

  • 2014年から2020年まで、先進国に対し、気候関連資金の額を増やすための最新の戦略や方法について、2年に一度報告書を作成するように要請。
  • 2014年から2020年まで、会議期間中にワークショップを開催する。
  • 2014年から2020年まで、2年に一度、気候関連資金についての閣僚級会合を開催する。

 

執筆:川阪 京子