1998年から南太平洋に浮かぶ島国ツバルに軸を置いた活動を行っています。最新ニュースの提供、気候変動防止を主題とした講演会への講師派遣・写真展へのパネル貸し出しを行う他、鹿児島の体験施設「山のツバル」では、スマートな低炭素暮らしの実験に挑戦しています。

気候変動ニュース

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2020年以降の新しい枠組みについて検討しきたダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)は、12月5日(土)4年に渡るその役目を終えた。ADPによって採択された共同議長提案されたパリ合意草案(48ページ)と、それに対する各国の意見をまとめた文書(11ページあり、リフレクションノートと呼ばれる)は、締約国会議(COP)に送られた。同日の夜に開催されたCOPの全体会合で、今後の交渉の進め方が議長から発表された。12月6日(日)午後には、大臣による非公式協議が行われ、合意に向けた本格的な交渉が始まった。

■ADPで採択されたパリ合意草案

議長によって提案されたパリ合意草案FCCC/ADP/2015/L.6/Rev.1

各国の意見をまとめた文書FCCC/ADP/2015/L.6/Rev.1/Add.1

 

交渉は、ADPで採択したパリ合意草案をベースに、主要な論点別の大臣による非公式会合や、またその下で議長と締約国との二国間協議やさらに小さい非公式会合(スピンオフグループと言われる)が行われている。そして、各会合での交渉の進捗が毎日夕方に開催されるパリ委員会(Comite de Paris)に報告されることになっている。

■パリ合意に向けた交渉を行う大臣級会合の一覧(2015年12月8日現在) 

●パリ委員会(Comite de Paris)

●大臣による非公式会合

(1)資金・技術・能力開発など実施の手段

(2)排出削減、緩和策、資金に関する差異化

(3)野心的な目標に向けての長期目標と定期的な見直し

(4)2020年までの対策強化

(5)適応と気候変動の影響による損失と損害への対応

(6)前文

(7)森林

(8)共同で目標達成するメカニズム

(9)気候変動対策実施による悪影響への対応策

●法律・言語の専門家によるグループ(各地域を代表する11名がメンバー)

 

各論点における大臣による非公式会合は、12月6日の時点では、横断分野的な論点に関する4つの非公式会合(上記にある(1)から(4))しか設置されておらず、ツバルのような島しょ国が大事と考える「適応と気候変動の影響による損失と損害への対応」については誰がどこでどのように議論するのかが見えず、島しょ国には不安が広がった。しかし、その後の議論で、「適応と気候変動の影響による損失と損害への対応」についても大臣級の非公式会合をもつこととなった。特に気候変動の影響による損失と損害への対応については、第1週目のADPの非公式会合では、非公式な二国間協議以外ではほとんど議論されなかった。ようやく大臣級の非公式会合で本格的な交渉が動き出すこととなる。

■パリ合意草案における損失や損害への対応の扱い

条項について 損失や損害への対応について 気候変動強制移動調整機関(climate change displacement coordination facility)について
途上国グループ 独立させる パリ合意のもと新たな国際メカニズムを立ち上げ実施する パリ合意のもと新たに立ち上げる
議長提案1 独立させる ワルシャワ国際メカニズムのもとで扱う ワルシャワ国際メカニズムのもとで立ち上げる
議長提案2 独立させず、適応策の条項に入れる ワルシャワ国際メカニズムのもとで扱う ワルシャワ国際メカニズムのもとで立ち上げる

 

途上国グループは、気候変動の影響による損失と損害への対応について、パリ合意の中にそれに関する独立した条項をたて、損失や損害への対応を具体的に実施していけるようなしくみを立ち上げることを明記するように求めている。一方、ADPの共同議長によって提案されたパリ合意草案には、パリ合意のもと、気候変動の影響によって発生する損失や損害への対応には独立した条項をたてず、適応の条項のもとで扱うという先進国の意向を反映したと思われるオプションが明記されている。もう一つのオプションは、議長からの妥協案で、独立した条項をたてるが、気候変動の影響によって発生する損失や損害への対応については、COP19でできたワルシャワ国際メカニズムのもとで扱うこと、そして、気候変動の悪影響によって被災した人たちを支援する気候変動強制移動調整機関(climate change displacement coordination facility)についても、ワルシャワ国際メカニズムのもとで設置することという、既存の組織を活用する案になっている。

ツバルのような国にとって、今後10年以上続く新しい合意のもと、独立した条項をたて、気候変動の影響によって発生する損失や損害への対応が実施できるようなしくみをきちんとつくることは、排出削減目標の底上げや1.5℃未満の達成と同じくらい自分たちの国や国民を守るために必要不可欠だ。しかし、ツバル代表団は20名ほどと小さく、次々と設置される非公式交渉会合、さらなる小さい交渉グルプ、そして、各国が行う二国間会合の全て把握するのは難しい。それでもツバル代表団は、朝早くから代表団会合を開き、深夜まで非公式会合に参加し、がんばっている。ツバルの首相も各国首脳が帰るなか最後までCOP21に残り、あきらめず交渉を続けている。

ぜひ、日本からパリ合意がツバルを救えるものになるようそして、世界を救えるものになるよう応援してほしい。

Save Tuvalu to Save the World

 

(執筆 川阪 京子)