1998年から南太平洋に浮かぶ島国ツバルに軸を置いた活動を行っています。最新ニュースの提供、気候変動防止を主題とした講演会への講師派遣・写真展へのパネル貸し出しを行う他、鹿児島の体験施設「山のツバル」では、スマートな低炭素暮らしの実験に挑戦しています。

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泡瀬干潟の危機 今回の沖縄訪問の目的は沖縄県地球温暖化防止活動推進センターの主催する講演会で島国ツバルと温暖化の問題を紹介する講演を行うことであったが、個人的に心がけていることとして、講演の前に現地の事情を出来るだけ把握してから望みたいという思いがあるので、今回は講演の前日に沖縄入り、しかも講演会は中休みを1日挟んで3日間に渡っていたこともあって、充分に視察する時間が取れたのは幸いであった。講演会の様子はこちらで参照して頂くとして、前述の「沖縄のダメなところばかり」の話を進めよう。

沖縄県のホームページの中に観光リゾート局という部署のページがある。先日、2005年度の観光目標が掲載された。観光客数は540万人(4.4%増)一人あたりの県内消費額は77, 000円(4.1%増)でもって、観光収入は4,160億円(8.8%増)あくまでも「目標」であるから、役人が適当に考えた数字なのだろうが、おめでたいほどの右肩上がり、その原資となるのは「青い海、青い空」であると書かれている。

しかし、沖縄本島・特に南部の地図を見るとその海岸線は埋め立て地だらけで、青い海は全滅に近い。よく見ると、埋め立て地の海側に楕円形の凹みを見つけることが出来る。ある凹みにはトロピカルビーチと書かれている。ビーチ・・・沖縄本島ではビーチとは埋め立て地に作られた人工の砂浜のことを指すようである!。その一つ、サンセットビーチを訪れた。まだお台場の方が広くて良いんでないの?という程度の凹み。それも砂が流されてしまっていて、基礎のコンクリートの石段が見えている有様だ。その石段を掃除しているおばさんに聞いてみると、毎年観光シーズンの前には沖から砂を運び込むそうだ。「バッカみたいだね~」とおばさんは笑っていた。まったくバカみたいなお話である。

2002年3月まで沖縄の公共工事には沖縄振興開発特別措置法という法律が適用されていた、この法律の別表では港湾施設工事はその工費の95%を国庫が補助できるように定められている。ということは、工事をすればするほど国庫から税金が転げ落ちてきて、大手ゼネコンや地元の土建業者、そこに虫食う族議員が儲かる仕組みが出来ている。言い換えれば、その仕組みを活用して私腹を肥やすために海が埋め立てられてきたわけだ。土建業者と族議員のために貴重な自然環境を失い続けているのである。

沖縄振興開発特別措置法失効後は沖縄振興特別措置法同様の法律が利権を守る為に制定されている、現在この悪法を活用して埋め立てを進めようとしているのが沖縄市の東側、中城湾に位置する「泡瀬干潟」だ。驚いたことにこの干潟、沖縄県の自然環境保全評価ランク1に指定されているという、その面積290ヘクタールは現在琉球列島に残る干潟の中でも最大の面積である。日本列島に自生する16種類の海草のうち半数にあたる6種類の海草が確認されるほど多様性に富んだ貴重な場所でもある。

ここを埋め立てる言い訳は2つ用意されている。干潟北側に沖縄振興特別措置法に基づいて特別自由貿易地域に指定(平成11年3月)されている港湾地区整備事業があるのだが、この事業地に面する港の海底を掘り下げて大型船の入港・係留を可能にする工事が計画されている。その際に出る多量の土砂の廃棄場所が必要であると言うのが1つめの言い訳。2つめは「沖縄市の振興のみならず沖縄本島中部圏東海岸地区の活性化を図るためには、国際交流リゾート拠点や海洋性レクリエーション活動拠点、情報・教育・文化の拠点となる「マリンシティ泡瀬」の整備促進が必要です。」となっている。ホントに?

簡単に言うと、関税や法人税を安くすれば会社が集まるかもね~というのが特別自由貿易地域、その為の工事の土砂を捨てる場所は近い方が面倒くさくないので、隣の干潟に廃棄。「廃棄」というと補助金が出ないので埋め立てと称して国庫金を貰って、土地が出来れば多分リゾートホテルとかが建設されて、儲かるかもね~。こんな感じで計画された埋め立て事業は総額489億円。先に完成した自由貿易地域90haのうち企業の誘致が決まったのはわずかに1.4ha…それ以前に拡張工事を予定している港の収益も最悪で、これまでに32億円が赤字となり税金から補填されたそうだ。つまり、自由貿易地域も新港もマリンシティも需要が無いのだ。しかし、ゼネコンや地元の土建屋・族議員は工事で大儲け、埋め立てた後の事は考えない。まさしく税金で無駄を造り私腹を肥やす土建国家日本の構図がよくみえる。(c.f. 沖縄タイムス2004.12.8

訪れたのが満潮の時だったので、干潟の様子は観察できなかったが、岸辺まで降りていって水の中を覗くと、海の底は二枚貝や巻き貝で覆われている。それだけでも豊かな自然があることを実感できる。沖縄本島最後に残されたこの干潟、最後の一つぐらい残したい。反対活動をしている人達の気持ちが痛いほど感じられる。沖合にはすでに桟橋が造られていて重機の影があり作業を行っている様子だ。ここも待ったなしの状況なのだ。(c.f. 泡瀬の干潟写真集

泡瀬干潟を守る連絡会ホームページ」決して見やすいとは言えないホームページであるが、大変参考になる資料が掲載されているので興味のある方は是非参照して欲しい。また、呼びかけ人も募集している。

泡瀬干潟・辺野古沖を視察して その4
基壇が露出してしまっている人工ビーチ。埋め立ては国の補助が出るが、砂の補充は村の予算で行わなければならない。

泡瀬干潟・辺野古沖を視察して その5 推進派の看板、よくもまあこんな絵を描けるな~と思うが、描いている人も、基本計画・設計をした人にも悪気はないのだ。彼らはただ仕事をしただけ。巨悪は政治の中にいる、それこそを確信犯という。

泡瀬干潟・辺野古沖を視察して その6

沖ではすでに桟橋がかかり重機が稼働している。熱帯魚の水槽用の海水を汲みに来ていたおじちゃんは「カニでも貝でも沢山いるさ~水も綺麗だしね」と吐き捨てるように言った。

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