2004年12月に沖縄本島、泡瀬干潟・辺野古沖を視察した際のレポートをまとめました。(3/5)
補助金漬けの構図
沖縄というと基地問題も深刻だ。本島面積の20%近を占める米軍基地は、平坦に突きだした岬、小高くて平らな場所、人が入らない森の奥、島中至る所にある。ジェット機の爆音は日常で、田舎町には銃声やロケット弾の音が響き渡る。ここは戦場か?いやいや小泉首相の言葉を借りるなら、自衛隊の基地もあるので「非戦闘地域」である。
実際に住んでいる人にとっては迷惑この上ないだろうと思うと、そうは言い切れないようだ。島と言っても広い。困っているのは基地周辺の住人だけで、ちょっと離れるとその存在は突然希薄になる。基地周辺には自分の土地を基地に貸している地主も多いと聞く。米軍が沖縄から出て行ったらマズイ、その既得権を守るためにはお金を惜しまないだろう。基地で働いたり、そこに物品を納めて成り立つ会社もあるだろう。反対派と地主・受益者、基地周辺の狭い地域の中で微妙なバランスがあり、今まで基地が存続している理由の一部となっているのかもしれない。そんなことを辺野古に向かう車の中で考えた。
沖縄本島の中心部を延びる高速道路は名護から那覇まで完成したのは昭和63年(1988年)だそうだ。早朝の通勤時間に利用したのにもかかわらず渋滞はない。道路は途中から「ヤンバル」と言われる山がちのエリアを走る。那覇市周辺が灰色の粘土質の土壌だったのに比べて、ヤンバルの山肌は赤い。これが曰く付きの赤土か…。ダムがあったり、米軍の演習場があったりと飽きることはない。那覇ICから名護終点手前の宜野座ICまで48km。1時間ほどで宜野座ICに到着、ここで驚いたのは高速代!なんと軽自動車で700円(ワーオ)普通車でも850円。ちなみに関東では厚木IC~御殿場IC間は、距離48.7km、普通車で1400円だ。ホクブシンコウという聞き慣れない仕組みのおかげで補助が出ているということだ。
車はそのまま宜野座村の中に入っていく。ひとけのない田舎村だ。町並みも寂れていて、東北の過疎化した漁村のようなイメージと言えば伝えやすいかもしれない。が、しかし!である。村役場が見えてきたときにビックリした。不用意にでかくて立派なのである。人口5000人、世帯数にして約1500世帯、その村のヤクバの写真を見て欲しい・・・宜野座村HP。ちなみに人口657,000、世帯数287,000の東京都江戸川区役所本庁舎はこんな具合。何かがおかしい。極めつけは通りを挟んでヤクバの前にある「宜野座村文化センター」このサイトの「ご挨拶(http://www.tuvalu-overview.tv/topics/okinawa/003/greeting/greeting.html)(2005年7月以降にページが消されてしまったのでgoogleのキャッシュの記録にリンクしています)」を読むと誰のお金でこの施設が出来たかが分かる。平成8年(1996年)に設置された「沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業」内閣府のホームページによると「沖縄懇談会事業」が略称らしい。総事業費1,000億円、うち国費約900億円だそうだ。
目的は米軍基地があることに対する閉塞感を緩和するための土建工事を達成することにあるようなのだが、その2回にわたる懇談会の座長を務めた慶應義塾大学教授の島田晴雄氏の性を取って島田懇談会と呼んでも差し支えないらしいことが、文化センターのサイトの「ご挨拶」を見ると読み取れる。まるで宗男ハウスである。内閣府のサイトにはいったい幾らの税金を注ぎ込んだのか記載がないが、この事業を達成することで、雇用創出、収益増加の効果があるのだそうだ。この島田晴雄氏、内閣府特別顧問になっている。特別顧問とは気の利いた役職を作ったものである。政治家が直接絡むと面倒が起きるが、教授ならなんとなくごまかせそうな気がする。多分、発展途上の土建国家には必要な人材だったのであろう。これからは適当に力を抜いてやっていただきたいものだ。
米軍基地があって迷惑をかける代わりに、文化センターを作りますよ!っていうこの仕組み、基地の近所の住民と地主の馴れ合いと同じ構図を税金を使って大規模にやっているわけだが、その馴れ合いの中でも特に普天間飛行場代替地に限って、もっと沢山馴れ合いましょう!というのが、前述の「北部振興」だ。 平成15年(2003年)から毎年100オクエンの税金が、何か無駄なことに消えているらしい。定額制というのも疑問だが、「北部振興協議会」なるものの出席者が一切書かれていないのも気になる。こちらは島田懇談会とは別なのかもしれない。ちなみに、島田懇談会は「かんなタラソ沖縄」という高級銭湯もこしらえている。もっぱら阪神タイガースのキャンプ向けかと思ったら、海水風呂の評判は良いようだ。宜野座村の村人の感想も気になるところである。
※2004年11月、民主党の岡田代表に非戦闘地域の定義を問われた小泉首相は「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と答弁した、おおよそ人間の脳みそにはない思考だ。
相次ぐ米兵の不祥事やヘリコプターの墜落・戦闘機の破片が落ちても、自分の家に落ちたわけではないので安全だというのが政治家の考え方だ。