「脱・原発依存」への意見書
特定非営利活動法人 Tuvalu Overviewでは、7月13日に菅内閣総理大臣から表明された「脱・原発依存」に対する意見書を公開し、政府、マスコミにリリースいたしました。ツバルや南太平洋の人々の食生活は海洋資源に深く依存しています。その大切な海洋資源は今、大きな危機に直面しています。気候変動、とりわけ、地球温暖化による海水温の変化の影響で珊瑚などの小動物や大型魚類等の生息範囲、生存個体数などに変化が現れてきています。
福島第一原子力発電所から太平洋へ漏洩する放射性物質は、すでに、大きな変化を見せている海洋資源に徹底的な打撃を与える可能性があります。海に流れ出した放射性物質は広大な海によって希釈され、問題のないレベルになると解説されていますが、問題のないレベルでも食物連鎖によって濃縮されれば、近い将来、海洋は食べられない資源で満たされる恐れもあるのではないでしょうか?また、測定器など高額な機器を所持できないツバルを初めとする途上国は、汚染の事実を判断できる機会もなく、それを食べ続けることになるかもしれません。
周辺を海に囲まれ、かつ、重大な事故に繋がる恐れがある地震が頻発する日本において、原子力発電所がいかに危険な存在であるかを、私たちは今、改めて認識させられています。原子力発電所を段階的に冷温停止から廃炉にし、自然エネルギーや再生可能エネルギーの比率を高め、二酸化炭素の排出を削減していく道のりは、険しいものかも知れませんが、太平洋の国々を含めた安全保障の確立を考える上で、避けては通れないものだと思います。
このような視点から、特定非営利活動法人 Tuvalu Overviewは菅首相がかかげた「脱・原発依存」に対しての具体的な政策検討と行動開始を希望します。
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『「脱原発依存」と「脱温暖化」の両立した社会の実現』に関する意見書
3 月 11 日の東日本大震災で被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。震災から4ヶ月が経ち、まだ福 島第1原子力発電所の事故を収束させることができず、国民生活及び諸外国対し大きな不安と影響を与えていま す。原発をめぐって、国民的な議論が沸き上がりつつある中、7 月 13 日に菅直人首相が記者会見で、「原発に依 存しない社会を目指すべき」という、今後の原子力政策の大きな方向性を示したことは、私たち日本国民のみな らず、環太平洋に生きる人類の未来への安全保障を確立するという、当たり前の目的に対して、画期的であり高 く評価します。
原発はこれまで日本の地球温暖化対策の大きな柱として進められてきました。それを抜本的に見直すにあたり、 CO2 の排出が増えることが指摘されていますが、2030 年までに原発を順次停止し全廃しても、自然エネルギー の活用や省エネなどで、CO2 の排出量を 2020 年において 1990 年比 25%削減が可能であり、かつ、経済への影 響もほとんどないという試算(※1)もあり、「脱原発」と「脱温暖化」の両立が可能であることが分かっています。
東京電力福島第一発電所の事故と、難航を極める事故処理の現状を見るに付け、原子力は我々人間が扱うべき ではないエネルギーであり、かつ、今回の事故で放出され続けている放射能物質が人間及び自然環境に与える将 来への影響を考えると、地震国日本で原子力政策を続けることの危うさを改めて認識させられると共に、当団体 の活動拠点であるツバル国をはじめ、気候変動の被害に直面する国々への影響と負担を最小限に押さえるために も、地球温暖化防止と原発の段階的な廃炉による脱原発依存という首相の発言は各国からの賛同を得られるもの と考えます。
鳩山前首相が打ち出した CO2 排出量を 90 年比で 2020 年 25%削減するという目標も強く堅持しつつ、「脱原 発依存+脱温暖化」社会を実現していくための具体的な政策検討と迅速に行動を開始することを強く希望します。
2011 年 7 月 15 日
ツバル国環境親善大使 遠藤 秀一
特定非営利活動法人 Tuvalu Overview 代表理事
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※1)地球環境と大気汚染を考える全国市民会議 (CASA)「原子力発電に依拠せずに25%削減は可能 CASA2020 モデル (Ver.3) の試算結果 2011 年 6 月」 http://www.bnet.jp/casa/2020model/CASA2020Model_ver3.pdf