第66回国連総会ハイレベル会合
9月13日から27日まで第66回国連総会のハイレベル会合がニューヨークの国連本部で開催されました。日本からは野田佳彦総理大臣が参加し、22日には原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合で、23日には一般討論でスピーチを行いました。
原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合での野田総理のスピーチ
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/201109/22speech.html
一般討論の野田首相のスピーチ
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/201109/23enzetu.html
野田首相には、前首相が提言した内容と同様の「日本は脱原発依存を目指し、国民的に議論していく」等の声明が期待されていましたが、国際社会へ向けた首相のメッセージは時代にも完全に逆行するもので、日本は原子力発電の安全性を世界最高水準に高め、輸出に関しても積極的に継続していく。という自民党が政権を担っている時代と同じ内容でした。福島で起こしてしまった東京電力の原子力発電所の事故すら無かったも同然の首相の声明は、被災地の人々のみならず、日本国民全員への裏切行為であるばかりではなく、国際社会に対しても、日本の現政権の幼稚と無知を露呈してしまったと言えるのではないでしょうか。
また、気候変動については2年前国連総会で前鳩山首相が発表した2020年までに25%を堅持するという方針に触れることもなく、COP17に向けた日本の方針も語られなかったことも非常に残念でした。
【ツバル国首相の声明全訳】
今回の国連総会では、昨年の12月24日に選出されたウィリー・テラヴィ新首相も参加し、9月24日の一般討論でスピーチを行いました。
一般討論のウィリー・テラヴィツバル首相のスピーチ
動画と要約(英文)はこちら http://gadebate.un.org/66/tuvalu
スピーチ全文(英文)はこちら
http://gadebate.un.org/sites/default/files/gastatements/66/TV_en.pdf
以下にスピーチ全文の日本語訳を掲載します。
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ツバルステイトメント
ツバル首相 ウィリー・テラヴィ
第66回国連総会 一般討論
2011年9月24日
ニューヨーク
議長、ご列席の皆様
ツバル首相として初めてこの演台に立ち、国連総会の一般討論に参加するにあたり、皆様へ心からご挨拶と、ツバルの国民や政府から皆様のご多幸をお祈りする気持ちをお伝えできることをうれしく思います。また、彼らの代わりにここでお話ができることを誇りに思います。そして、こちらに到着以来、私たち政府代表団に対し暖かいもてなしの心と特別の外交儀礼をつくしてくださるこの会議のホスト国であるアメリカ合衆国政府に特別な感謝の意を表します。
議長、10年前、ツバルは、国連に対する更なる積極参加のための機能をもつツバル国連恒久使節団をここニューヨークに設立、開設しました。最も小さい国の一つで資源は限られていますが、我々の運命を追求することにおいて、他の加盟国の皆さんと協力し、我々の希望と信頼をそのまま証言することが、国連において我々の存在を示すことです。さらに、国連の基本的な柱として国連憲章に記されているとおり、これは国際平和と安全の維持、発展、そして人権を支持する我々の継続したコミットメントを示しています。
議長、ツバルは、オープニング会合で明確に示された、紛争の平和的解決、国連改革と活性化、災害防止と対策の向上、そして、持続可能な発展と世界全体の繁栄という議長が力を入れてらっしゃる4つの点を心より歓迎し、支持します。特に、この一般討論で提案された「紛争解決における仲介の役割」というテーマは、まさに世界中で今起っていることを考慮すると、とても時宣にかなったものです。
これに関して、9.11の10周年を記念して、遅ればせながら、我々からアメリカ合衆国の国民と政府に感謝と尊敬の意を表します。ツバルは、このようなテロ活動や世界中の全ての似たような出来事を強く非難します。そして、我々の祈りは、愛する人をなくされた方々とともにあります。ツバルは、正義と平和のために命を失った人々に更なる敬意を表します。
平和を愛する国としてツバルは、世界の平和と安全を維持するための国連の役割を心より支持します。しかし、同時に、国家の保全と主権はなんとしてでも尊重されなければなりません。ツバルは、紛争解決のために、軍隊や暴力的な行為はその手段として使われるべきではないと考えます。その代わりに、当事国は、それぞれの意見の違いの根本的な原因について議論し理解するよう務めるべきですし、もっと平和的な方法でお互いの意見を聞き合うよう努力すべきです。
議長、今日世界では、グローバル化やその他の関連する国際的な問題による今までに例のない影響を通じて、国境を超えた大規模な変化が起っています。そして、それはツバルに決定的に重大な影響を与えています。これは、進行中の世界的な金融と経済の危機の深刻な影響によってさらに悪化してきています。そして、それはツバル経済に甚大で決定的に重大な悪影響を与えています。特に、我々の国家の経常予算を安定化させるための主な歳入源であるツバル信託基金は、深刻な影響を受けています。結果、我々の政府には、この困難な時期の間、国民に基本的なサービスを提供する事ができるレベルを維持するため、国家経常予算を合理化し抑制する以外の選択肢はありません。
この件について、私は、国際社会と開発のパートナーに、今年の頭にトルコで開催された第4回国連後発発展途上国会議において採択されたイスタンブール行動計画の実施通じて、ツバルのような後発発展途上国を支援する約束を緊急に果たす必要があることを訴えます。
イスタンブール行動計画は、今後10年の間に後発発展途上国と国際社会の両方が勢力的に共同で実施させる必要がある生きた文書です。この点については、このような行動計画の主要な目的が、来月行われる国家レビューサミットで、ツバル持続可能的開発戦略(KakegaII)の中に、統合、組み込まれることになったことをうれしく思います。
さらに、後発発展途上国としてツバルは、国際経済によるショックや気候変動の影響、非伝染性の病気のような病気の発生に対して最も脆弱です。ツバルは、後発発展途上国の卒業問題について対応する際、国連に対し、これらの脆弱性を真剣に検討するよう訴え続けます。次の10年間で後発発展途上国の50%が卒業するというイスタンブール行動計画の野心的な目標ですが、ツバルは、経済的にも環境的にも脆弱でありかつ海外開発援助に頼り続けている点は完全に無視されるべきではないと考えます。この点について、卒業の基準は、我々の脆弱性を反映、認識するため見直す必要があります。
議長、先月、ツバルは第2回ミレニアム開発目標の進捗報告書2010/2011を発表しました。そこでは、目標達成に向けたこれまでの進展について明記しています。ツバルは最近の世界的な危機の継続的な影響を受け続けているにもかかわらず、2015年までにミレニアム目標のうちの5つの目標が達成される可能性が高く、3つは種々な結果となることは心強いことです。前述のように、我々がミレニアム開発目標の達成に進歩を遂げる一方で、そのような進歩は、我々の経済や環境への脆弱性によって、一晩で後退してしまう可能性があります。
議長、進行中の総会と安全保障理事会それぞれの改革のための国連におけるプロセスや政府間交渉を強く支持します。しかし、我々は、それぞれの機能を更新する改革を実施するためのそのような国連組織の重要性は認識する一方で、結論を出す前の時間がとても長いものになるのではないかと心配しています。この点において、我々は近い将来において交渉が完結するためのより現実的な予定表ができることを期待しています。
議長、もし、国連が、同じ共通の目標に対する台湾の貢献や努力に見る目も聞く耳ももたないことを続けてしまったら、世界中の平和の維持強化のための我々の共同での努力の意味がなくなってしまうでしょう。献身的な開発のパートナーとしての台湾の継続的な国際社会への貢献は、強調しすぎることはありません。この件について、ツバルは国連に対し、無条件でそのような貢献を認めるよう強く訴えます。特に、ツバルは、国連の補助機関、特に世界保健機関、国際民間航空機関、国連気候変動枠組条約に対して、台湾にそれぞれの会議や活動において意味ある完全な参加を許可するよう訴えます。
議長、気候変動は、21世紀とその後の国際問題において一番重要な問題で、世界全体での解決が必要です。気候変動は、各国に不平等に影響を及ぼします。全ての国が、そのような影響に適応し対応するための許容量と回復力を同じようにもっていません。ツバルのような小規模な島途上国にとって、気候変動は、我々の生存を脅かす安全保障の問題であることに疑いのないことです。
今年の年末に気候変動対策を進展させるために、ダーバンで気候変動枠組み条約会議が開催されます。これは、ツバルのような時間があまり残されていない最も脆弱な国にとっては決定的に重要な意味をもつ会議です。我々は、ダーバン会議は重要な結果を残さなければならないと考えています。
まず、最初に、京都議定書の第2約束期間の開始を可能にする京都議定書の改正案を採択しなければなりません。第1約束期間と第2約束期間の間にギャップが生まれないようにするための議定書改正案の暫定的な発効含む決定案を採択する必要があります。この改正案では、複雑化することなく、適応基金への資金を供与するクリーン開発メカニズム(CDM)の継続を確保する必要があります。
第二に、我々は、損失と損害に対応する国際的なメカニズムの開発を迅速に進展させなければなりません。ツバルのような最も脆弱な国にとって、これは重要で不可欠です。我々には大規模な気象災害の後、復興を促進させるための国際的なメカニズムが必要です。
第三に、我々は、森林減少と森林劣化からの排出削減に再度焦点をあてなければなりません。世界的な森林減少をきちんと減らしていくためには、我々はその原因に効果的に対応していく適切な措置を導入しなければなりません。我々は、この問題を需要側から見なければなりません。そして、森林減少を引き起こしている貿易商品に規制をかけるあらゆる手段を探らなければなりません。
最後に、我々は、全ての主要排出国がそれぞれの排出量を削減するため更なる断固たる行動をとらなければならないと考えます。現在、カンクン合意にある各国が誓約するシステムでは不十分です。ダーバンでは、京都議定書のもと削減目標を持っていない主要排出国のための新しい法的拘束力ある合意の交渉を開始するマンデートの合意を目指します。この合意は、京都議定書に代わるものではなく、議定書に補完的なものでなくてはなりません。
議長、来年のリオプラス20 に向けた議論の中で、我々は小規模島開発国のニーズに関するチャプターを確保しなければなりません。グリーン経済というテーマを検討していく中で、我々は、小規模島諸国経済のニーズをきちんと反映するため、現在の国際的な貿易制度をどのように変更することができるか探求しなければなりません。我々には、手に届きやすい、手頃な価格の再生可能エネルギーや省エネルギー技術が必要です。我々の海、ブルー経済を守るための助けが必要です。そして、我々には、我々の国の大きさから生じる不利を克服するための新しい特恵貿易協定が必要です。
議長、最後に、我国の経済や社会経済的な発展に影響を与え続けている最近の金融や経済危機とその他の進行中の世界的な危機の深刻な影響について繰り返し言わせてください。そのような危機に最も脆弱で海外開発援助に頼っている小規模島発展途上国そして後発発展途上国として、ツバルは、国際社会に対し、イスタンブール行動計画とその他の国際的なプラットフォームに沿って、緊急に名誉をもって彼らの約束と義務を果たすよう訴えます。ツバル国民と人類のために、あらゆるレベルでの継続した協力と強いパートナーシップをもって、我々はこれらの問題をうまく克服することができると強く信じています。
国連に神のご加護がありますように。
Tuvalu mo te Atua.(全能の創造主のためのツバル)
ご清聴ありがとうございました。
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翻訳 川阪 京子 (特定非営利活動法人 Tuvalu Overview 副代表理事)
文責 遠藤 秀一 (特定非営利活動法人 Tuvalu Overview 代表理事)