海面最大で81cm上昇
朝日新聞8日朝刊が伝えたIPCC第5次レポートの原案には、前回よりもさらに厳しい数字が並んでいます。今世紀末2100年の時点での海面の上昇は最大で81cm、気温は4.8度、この気候の変動は人間活動によって引き起こされている可能性が95%であるとしています。81cmの海面上昇・・・ツバル国をはじめとする島嶼国、そして、すべての国の沿岸部に住む人々に大きな被害を与える数字です。
11月にはポーランドでCOP19/CMP9が開催されます。それに向けて、環境相と経済産業省が具体的な温室効果ガス排出削減の数値目標決定の論議を8月29日から開始する予定でしたが、調整が付かずに延期されています。日本は以前25%という数値を打ち出して国際社会にアピールしてきましたが、自民党政権に変わってから、安倍首相の指示によるゼロベースでの見直しを行っているところです。8月28日の毎日新聞の取材に答えた石原環境相は「現実的かつ野心的な削減目標を策定していかなければならないということは、何も変わっていない」としています。
東京電力福島第一発電所の事故処理に追われる日本は、現在、非常に深刻な状況にあります。二酸化炭素排出削減の頼みの綱にしてきた原発を今後再稼動することは、国際社会も国内世論も許すことはないでしょう。その代替として天然ガスによる発電が増えていますが、天然ガスも温室効果ガスを排出します。
このような状況において、東京オリンピックの招致が決まってしまいました。これから7年間、多くの土木建設工事が行われることでしょう。又、津波被災地の宮城県では高さ10m、総延長163kmという巨大防潮堤の工事が始まっています。中でも高さ14mという気仙沼小泉地区の防潮堤には異論も多く、住民側からも反対の声が出ているようです。あまり知られていませんが、コンクリートの製造時における二酸化炭素の排出量は膨大で日本の総排出量の4%程度を占めていると言われるほどです。
何を根拠にどのような手法で温室効果ガスの排出削減を国際社会に約束していくのか?11月に開催されるCOPは、オリンピック誘致の出来レースのような、勢いで嘘を並べた能のないプレゼンテーションは通用しない会議です。
「5色の輪で臭いものに蓋をした」などと言われないように、現実的かつ野心的な目標を策定と実行を行わなければなりません。