1998年から南太平洋に浮かぶ島国ツバルに軸を置いた活動を行っています。最新ニュースの提供、気候変動防止を主題とした講演会への講師派遣・写真展へのパネル貸し出しを行う他、鹿児島の体験施設「山のツバル」では、スマートな低炭素暮らしの実験に挑戦しています。

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昨年の年末、12月28日・29日、ソロモン諸島東方面に発生したサイクロン・ゾエが、首都ホニアラ(ガダルカナル島)から東南約1,000kmに位置するティコピア島及びアヌタ島を直撃しました。被災した住民は両島あわせて3000人~4000人、家屋の倒壊や飲料水・食糧の不足など被災生活を余儀なくされているようです。

サイクロンの直撃を受けた際に島の無線機が破壊され、島民は救助を要請する事も出来ずに、高台にある洞窟で避難生活をおくっていたと言う事です。BBCニュースによると、フリーのカメラマンが1月1日にセスナ機でティコピア島上空まで行き、生存者の確認に成功した事を伝えています。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/2623967.stm

その後、ソロモン政府が両島を災害エリアに指定し、災害の状況を調査するために船を派遣したのが1月5日、何故もっと早く船を出せなかったのか?という理由に、船のガソリン代が無かったので…という理由が公開されています。それに対して同政府は200,000ドルを拠出し対応したようです。

通常3日も飲み水を飲まなければ人間は脱水症状に陥って死に至ると言われていますので、今回の救助には時間がかかりすぎているとの批判が集まっています。同じくBBCのこの件に関して読者の声を紹介しているページをご覧ください。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/talking_point/2621585.stm

・フリーのカメラマンが1月1日に現地上空にたどり着けたのに、アーストラリアやニュージーランド空軍は何故何もしなかったのか?上空に行って無線機を一つ投下するだけでも大きな貢献ではなかったか?

・現地政府からの要請があってからでないと、他国の政府は救助にいけない、ということは国際常識だ。救助の遅れは同政府からの救助要請が5日までずれこんだことにも原因がある。

・1997年にオーストラリア政府は、遭難した向こう見ずなヨットマン2人を助けるために護衛艦と複数の航空機を送る事が出来た。何故、サイクロンで被災した島に同じ救助が出来ないのか?

・その島々に石油や鉱石などの資源があればこんなことにはならなかっただろう。

・イラクにいる兵力のほんの一部でも差し向けてくれれば良いのに!

大変興味深い様々な意見が飛び交っています。対して周辺国政府はどのような援助をおこなったのでしょうか?

http://www.jica.go.jp/activities/jdrt/030107.html

国際協力事業団(JICA)のページです。日本は大工道具100セットをはじめとして650万円近い援助物資を提供していますが、輸送日程に関しては調整中となっています。(もちろん日本の自衛隊は長距離を飛行する輸送機を複数機保有していますが、アメリカの要請以外ではなかなか発進出来ないのかな?)

このページには同様にオーストラリアとニュージーランド両政府、NGOの対応も公表されています。

1.豪州:約6万3,000米ドル相当(約750万円)を拠出し、警備船(第1陣)の燃料、第3次補給船(来週出航予定)チャーター料および燃料を負担。さらに、豪州空軍機による現地視認および現場へ援助関係(AusAID)と看護師を派遣。

2.NZ:約2万7,000米ドル相当(約320万円)を拠出し、第2次補給チャーター料および燃料を負担。

3.独:アセスメントチームを派遣。

4.米国領事代理:発電機1台

こう見ると日本政府は比較的大きな援助をおこなった事がわかりますが、悲しい事に、先に紹介したBBCのニュースや読者の声欄には日本の対応に関しては一言も書かれていません。飛行機を一機チャーターして援助物資をいち早く投下してあげる事が出来れば・・・現地の人ももっと喜ぶだろうし、国際世論にも訴えることが出来たと思うのですが、つくづくもったいないお金の使い方だなと思います。

対してアメリカの姿勢は分かり易いです、同時期にサイクロンの被害を受けたグアムでは、復興作業が急ピッチで進んでいると聞きます。何故か?その理由はアメリカ軍が駐留している事にもあるようです、その軍隊は今まさに臨戦態勢に突入しようとしているところ、ハリケーンで破壊されたグアム島のライフラインの確保は最重要で処理するべき課題だったということです。

ソロモン諸島への台風の直撃はそれほど珍しい事ではないようです、大昔から度重なる台風の直撃に耐えてきたので、救助が遅れても誰も死なないで済むのかもしれないのです。それに避難出来る高台があったというのも不幸中の幸いといえるでしょう。

このニュースを聞いた時、果たして同じ規模の台風がツバルの首都を直撃したらどうなるのだろう?と考えた時に絶望的な気持ちになりました。本来ツバルは地理的に台風の直撃を受ける位置にありません。しかし、最近の異常気象で中規模の台風の直撃を受ける回数が増えてきています。

高台の避難場所もないツバルをハリケーンの高波がすべてを洗い流してしまったら・・・生き残った人はSOSを出す事も出来ずに、救助要請も出せずに、ただただ船がくるのを待つしかないのでしょうか?そんな事にならなければいいな~と祈る事ぐらいしか僕には出来ないのですが…

文責:遠藤秀一