1998年から南太平洋に浮かぶ島国ツバルに軸を置いた活動を行っています。最新ニュースの提供、気候変動防止を主題とした講演会への講師派遣・写真展へのパネル貸し出しを行う他、鹿児島の体験施設「山のツバル」では、スマートな低炭素暮らしの実験に挑戦しています。

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今年(2005年)の7月、イギリスで開催されたG8サミットに向けて衝撃的な報告書が発表されました。日本でのニュースソースとしての取扱が極めて地味だったので、知らない人も多いと思いますが、年々増加する空気中の二酸化炭素が海水に溶け込んで、海水が酸性化している!というニュースです。それによって、元来アルカリ性の海水中に生きている生物の生存が危ぶまれているというのです!

下記のニュースでは、プランクトンをはじめ、貝類やサンゴまでもが被害を受けることを警告しています。朝日新聞に掲載された原文をそのまま引用させて頂きます。

2005年7月1日 ニューヨークタイムズ(米)

二酸化炭素は、それが地球温暖化の原因であろうとなかろうと、海を酸性化させている—。英王立協会の科学者グループは6月30日、こう警告した。同グループの報告書によると、海の酸性化が進めば、今世紀末には珊瑚礁やさまざまな海洋生物に被害が出るという。

「これは非常に深刻な問題だ。影響は骨や殻、炭酸カルシウムの硬い組織をもつあらゆる生物に及ぶ。」同グループの議長で、スコットランド・ダンディー大のジョン・ラーベン博士は、こう指摘する。

60ページに及ぶこの報告書は、6日からの英国での主要国首脳会議(G8サミット)にタイミングを合わせたものだ。サミットで議長を務めるブレア首相は、気候変動を抑えるための強力な取り組を求めている。

複雑で不完全なコンピューターモデルに基づく地球温暖化の予測とは異なり、二酸化炭素と海水の化学は単純かつ明白だ。自動車や発電所などで化石燃料を燃やした結果、毎年250億トン以上もの二酸化炭素が大気中に放出される。そして、そのざっと3分の1が海水に吸収される。

二酸化炭素は海水中で化学反応を起こして酸をつくり、この酸が殻などをむしばむ。「これは高校で習い程度の化学だ。疑いをはさむ余地はない」とラーベン博士は言う。

酸性かアルカリ性かの度合いを示すPH(水素イオン濃度指数)でみると、海水のPHは現在、弱アルカリ性の8.1。産業革命が始まった2世紀前より0.1ほど下がった。

わずかな変化のようだが、実際には、海水中の水素イオンは30%も増えたことになる。いまのペースで化石燃料を燃やし続けると、海面付近の海水のPHは2100年には7.7~7.9にまで下がるという。これは過去42万年で最も低い値だ。

同グループのメンバーで、米カーネギー研究所のケン・カルデリア博士によると、二酸化炭素の排出ペースはこの2世紀の間に速まっている。昔だったら、海面の水が深海の水と混ざって、二酸化炭素の影響を弱める時間的な余裕があった。「数十万年間放っておけば、心配はないのだが」とカルデリア博士。

海水のPHの変化は、温暖化や環境汚染ですでに傷ついているサンゴ礁の成長を、さらに遅らせるに違いない。「今世紀半ばには、サンゴ礁の劣悪化がはっきりしてくるだろう」とラーベン博士は言う。

海の酸性化はまた、炭酸カルシウムの殻をもつプランクトンを減少させ、自然界の食物連鎖を乱し、漁業に深刻な影響を及ぼす可能性がある、と科学者は指摘する。

(出典:朝日新聞2005年7月7日)

次のニュースは、2005年9月29日に毎日新聞から発表されたニュースです。

2005年9月29日 毎日新聞

研究チームの予測に基づく2100年の海水を使った実験では、ウキヒシガイという貝は、その海水中48時間で殻が溶け出してしまったという結果が報告されています。

研究グループのサブグループリーダー山中氏の「地球温暖化のような気候変動は不確かな点も多いが、海洋の酸性化は確実に起こる」とした話しが印象に残ります。

私達日本人は海洋資源に大きく依存しながら生きています。プランクトンが死に絶えれば、マグロもクジラも生存できなくなるでしょう。サンゴ礁が死に絶えてしまうと、ツバルの海も死んでしまいます。しかも、このニュースで取り上げている「CO2増加→海が酸性化→貝が溶ける!」という構図は、単純明快で、今、地球上に起こっていることであることを実感することができるものです。

二酸化炭素の排出量の削減は、地球温暖化のみならず、一刻を争う急務となってきていると言えるのではないでしょうか?