特定非営利活動法人ツバルオーバービュー

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報告 その1

2006年11月10日、AusAIDの太平洋気候変動会議において「What the South Pacific Sea Level and Climate Monitoring Project is Telling Us」と題された報告がありました。

これは、オーストラリア政府の主導で1991年より南太平洋で開始したSPSLCMP(South Pacific Sea Level and Climate Monitoring Project)*1が、取りまとめたもので、ツバル近海の海面は、フナフチ環礁での観測をスタートした1993年5月から2006年5月までの13年の間、年間5.8mmの上昇傾向にあり、合計で75.4mm上昇したとされています。他にもキリバスで6.0mm/年、トンガで8.1mm/年、などと南太平洋で軒並み海面が上昇している様子が読み取れます。

参照:http://www.bom.gov.au/pacificsealevel/presentations/briefing_paper_spslcmp_nov_2006.pdf

SPSLCMPプロジェクトマネージャーのPhilip Hall氏は、NPO Tuvalu Overviewの取材に対して、年間5.8mmの上昇トレンドに、13年の観測期間を掛け合わせるという単純計算が成り立つことを認めたうえで「10数年間SEAFRAME*2によって集められている短期的な観測データは貴重なものであるが、本来、海面上昇の傾向を知るためには、20年以上といった長期的な観測が必要といわれているため、今回発表された海面上昇も、エルニーニョや10年間の変動など短期的な海洋の変化の影響を受けた結果起こっている可能性を含んでいる。」と語りました。

2002年8月18日、オーストラリア政府の発表によると、1978年~2001年の期間の、ハワイ大学とAustralian National Tidal Facility (NTF)の共同研究では、海面上昇の観測には長期のデータ収集が必要であるという前置きと、データの欠損もあり不確かな点も認めつつ、ツバルの首都フナフチ環礁での海面上昇は約1mm程度であり、危惧する数値ではないというスタンスを示していました。

報告 その2
フナフチのSEAFRAMEステーション(2005年2月撮影)

参照:http://staff.acecrc.org.au/~johunter/tuvalu.pdf

しかし、今年の1月3日、オーストラリア気象庁から発行された年次報告書によると、過去約100年間におけるオーストラリアの平均気温も、世界全体と同様に、上昇傾向にあるという記述を読むことができます。

年次報告書
http://www.bom.gov.au/announcements/media_releases/climate/change/20070103.shtml

この報告に対して、ロイターは次のように報じています。

オーストラリア、地球温暖化の進行速い=気象局
[キャンベラ 3日 ロイター] オーストラリアは世界の他の地域と比べ、速いスピードで地球温暖化の影響を受けていることが分かった。豪気象局が3日発表した年次報告書で明らかにした。
報告書は、もともと干ばつが多く乾燥した気候のオーストラリア大陸は、現在そうした独自の気候と戦争のような格闘を強いられている、と指摘。また国土の半分が水不足に苦しむ一方で、もう半分の地域には全土の年間降水量に匹敵する降雨があったとしている。
ロイターの取材に対し、気象局の担当者は「これらが地球温暖化加速による影響だということは、ほとんどの専門家の一致した見解」だと語った。
その上で「オーストラリアは気温も世界平均と比べて速いペースで上昇しており、最も暑い年の記録上位20のうち15は1980年以降の年で占められている」と話した。2007年1月3日17時29分配信 ロイター

昨年のAusAIDの太平洋気候変動会議で、それまでの姿勢を一転して海面上昇を認めるかのような発表をした背景に、政治的な思惑がないのか?という問いにPhilip Hall氏は「オーストラリア政府の政治的スタンスには変わりはない。海面上昇の傾向をみるには、最低20年の観測データが必要で、2002年の段階では10年程度のデータしかなく、科学的にはっきりとしたことが発表できなかった。2006年のデータは、2002年にくらべてデータの蓄積があり、より長期的な傾向がみえつつある。しかし、これらもエルニーニョなどの影響による短期的な海面の変化を理解するには十分だが、気候変動による海面上昇の傾向を科学的に分析するにはまだ十分ではない。」としています。観測開始から13年を経て長期的な傾向は見えているが、海面上昇が起きていると断定はできないという見解です、同時に、あと7年観測すれば科学的な分析が可能であるということのようです。

あと7年、このままの上昇トレンドが続くとすると、観測から20年目の2013年には海面が11.6cm上昇することになり、100年後には58cm上昇するということも考え得るのです。平均海面が58cmも上昇してしまっては、ツバルだけではなく、日本での甚大な被害も想像できます。私たちはすでに「Point of no return」にいるかもしれないという話しを聞くことがあります。そうではないことを祈りつつ、最大の行動を素早く効果的に実行していく必要があります。

文責 NPO Tuvalu Overview 代表理事 遠藤 秀一
取材担当 NPO Tuvalu Overview コーディネーター 川阪 京子
この記事に関するお問い合せはこちらからお願いいたします。

*1 The South Pacific Sea Level and Climate Monitoring Project (SPSLCMP)とは

オーストラリア政府が、South Pacific Forumに参加する南太平洋諸国が示した地球温暖化の気候や海面に対する影響への懸念に対応するために、1991年に始まったプロジェクト。

*2 SEAFRAMEとは

SEAFRAMEステーションは、空気、水温、風速、風向き、気圧など多くの変動する関連要素も観測している。また、地球の重心を不動点とし、GPSと組み合わせて、潮位計測の基準点の位置を国際地球基準座標で継続的に測定することで、海面上昇に大きく影響を与えてしまう地殻変動に伴う観測点の動きを把握している。

2001年12月に動き出したミクロネシア連邦のポンペイのもの以外は、1994年10月から動いている。SEAFRAMEは、South Pacific Forumに参加する12の南太平洋諸国(クック諸島、ミクロネシア連邦、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ)に設置されており、それぞれのSEAFRAMEを結ぶ海面上昇と気候のモニタリングネットワークがある。