1998年から南太平洋に浮かぶ島国ツバルに軸を置いた活動を行っています。最新ニュースの提供、気候変動防止を主題とした講演会への講師派遣・写真展へのパネル貸し出しを行う他、鹿児島の体験施設「山のツバル」では、スマートな低炭素暮らしの実験に挑戦しています。

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息を吐くように嘘を付く、とまで揶揄された政治家が暗殺され、自民党と統一協会のズブズブの関係が露呈した日本。ここ30年ほどの政治をすべて白紙に戻して、リスタートしなければならないほどの政治の堕落ぶりには、呆れ返るばかりです。

それを見抜けなかった、若しくは、表舞台に出ることなく、戦い続けた人々の声を受け取ることができなかったことは、本当に残念なことですし、反省しなければいけません。これをスタート地点として、次の行動を始めることが大切です。

統一協会の北米での影響も強大であることが明るみになるにつれ、世界はどこまでカルトに侵食されているのだろうか?と不安が深まってしまいます。

 

実は、南の楽園、シンプルライフのツバル国でも、宗教は大きな影響力を持っています。90%以上の国民がキリスト教徒であると言われていますが、その殆どがサモアに本部がある「EKALESIA KELISIANO TUVALU」の信者です。

malaeヌクラエラエ環礁にひっそりと残されているマラエ。その昔、その窪みには美しい目が据え付けてあったという。

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1861年にクック島の助祭が、嵐に巻き込まれ8週間の漂流をへて、ヌクラエラエ環礁に漂着したことがきっかけとなり、この島での布教活動が始まり、自然崇拝、先祖崇拝のポリネシア的宗教から、キリスト教へ改宗されていった歴史があります。先月、ヌイ環礁でキリスト教100周年祭が盛大に行われました。

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1861年にLayman Elekanaがヌクラエラエ島に到着したことを記念する碑。アメリカの宗教団体によって設置された。銘板には「イエス・キリストの福音を携えてLayman Elekanaが到着したことを記念して。」と書かれていて、史実からは随分と湾曲した書き方。これが歴史となっていくと考えると、宗教の歴史とは?という疑問も払拭できない。

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サモアから派遣された牧師の指導の影響は言葉や唄や踊りなどにも及んでいて、今ではキリスト教以前のツバル文化を知る方法はありません。このようなことは世界各国で見られることですが、本当に残念なことだと思います。

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バイツプ環礁のEKT教会、島民総出のボランティアでのリニューアル事業の際に6階建てのタワーを追加した。

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9つある島には、こんな辺境にあるとは思えないような巨大な教会があり、その脇には、島民から無償で提供される牧師の家があります。牧師の3度の食事も島民がボランティアで提供するため、生活費はかかりません。

その上、年に2回ほどある牧師の日には、首都のフナフチの牧師で500万円くらいの現金をお礼金として集金します。現金収入がほとんどない離島においても、海外に出稼ぎに出ている息子からの仕送りを、すべて教会に寄付した。。。などという信じられない自慢話を良く聞きます。牧師が集めた金は海外の個人口座に送金し、引退後は海外に移住するのが常のようです。

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日曜日のミサの前には教会で子供向けのサンデースクールが行われるが、ここでもお布施が必要。

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牧師の仕事は、日曜日のミサの説教だけではなく、誕生日、結婚式、葬式などの儀式や、島の伝統行事などにも必ず出席し、牧師が説教の後に、アイランドチーフの挨拶、その後、イベントスタートという手順を踏みます。アイランドチーフよりも牧師のほうが立場が上なのです。この習慣がいつ頃から定着したのか分かりませんが、建国記念日などの国家行事や政治プロセスにおける式典などでも同様です。

牧師の説教はいらないよね、という声も聞かれますが、島国特有の同調圧力から逃れるのは簡単ではなく、皆、意味がないと認識しつつも習慣から抜け出せないでいる。というのが実情です。私も含めて、イベントには15分遅刻する人も目立ちます。

ノアの箱舟の一節を信じるあまり、キリスト教的には海面上昇を信じることができない、という高齢者が多くいたため、国内の気候変動対策に関する政策の取りまとめに影響がみられた事もあったようですが、海岸侵食やサイクロン被害、旱魃被害などが具現化するにつれ、海面上昇を懐疑する声は小さくなってきています。

しかし、ここで驚くような選択が先週行われました。

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Rev. Kitiona Tausi(2018年)

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北部にあるナヌマンガ島出身の議員が亡くなったあとの補欠選挙で、EKT所属の牧師が議員に選ばれました。彼の名前はKitiona Tausi氏で、長年首都の島で牧師をしていた人物です。牧師引退後の2018年、代表理事の遠藤が彼にインタビューをする機会があり、話を聞いたときのことです。なんと、彼は気候変動懐疑論者だと言うではないですか!

その理由は、

「離島(彼の出身のナヌマンガ島もその一つ)への支援事業が気候変動対策に偏っているため、気候変動の被害が少ないナヌマンガ島では海外からの支援事業が全然行われていない。そのため、教会へのお布施が集まらず、サモア本部への上納金が十分に払えない。このことは非常に大きな問題だ。この問題を解消するには気候変動は無いものとして、それ以外の支援事業の離島での実施を求めていくことが大切なのだ!」

と笑顔で言ってのけたのです、、、気候変動によってツバル国民が被災することを防ぐよりも、宗教団体の本部への上納金の額が大切である。。。

気候変動対策のお金の流れを見てみましょう。まず、COPなどで議論され開発途上国への緩和策適応策支援として「緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)」が設立されました。日本政府は約1,540億円を拠出しました。この中から数億円というボリュームで、ツバル国ですでに発生している気候変動の被害に対する適応策が実施されます。海岸侵食への土木工事等が主な使い方になります。(根本解決ではありませんが,,,)適応策が実施された島では、島民が労働力として使われるので、一時的に現金収入が増えます。EKTはそこからお布施を巻き上げてサモアの本部へ送ることを常套手段としているわけです。

簡単に言えば日本人の税金がサモアの宗教団体に流れる。ということです。

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7月22日、宣誓書にサインをして国会議員となったKitiona氏(Tuvalu.tv 提供)

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住民が数百人しかいないナヌマンガ島の補欠選挙では、2つか3つのクラン(親戚縁者一同)が競い合った結果、Kitiona氏当選となっているだけで、統一協会のように、計算ずくの選択では無いと思いますし、今の国会の若手の議員たちの顔ぶれを見ると、Kitiona氏の公的な活躍の場は少ないと思われますが、「国民から吸い上げた税金や、国際社会からの人道的な支援金」をサモアのヘッドクオーターのお友達に配分することもできるかもしれません。額は小さいですが、自民党政治と同じ状況がツバル政府の中にも生まれてしまったように見えます。

 

世界的に見ればキリスト教はカルトではないと定義されていますが、人口1万人しかいない小国での、お金の流れや政治への影響を鑑みると、キリスト教はこの世で一番巨大で強力なカルトということもできるのかもしれません。カルト以外の神様を見つけて未来安泰を祈願したいところですが、いったいどこにそんな神様がいるのやら、、、

せめて庭の田の神様に手を合わせておくことにしましょう。その程度の習慣で十分だと思います。