汚染水の海洋投棄は許されるのでしょうか?
南太平洋の国々、16カ国と2つの地域で構成される太平洋諸島フォーラム(PIF)という会議体があります。加盟国は、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、サモア、ソロモン諸島、バヌアツ、トンガ、ナウル、ツバル、ミクロネシア連邦、パラオ、マーシャル諸島、キリバス、クック諸島、ニウエ、仏領ポリネシア、ニューカレドニアとなっています。
2023年6月26日、PIF議長は福島第一原発の汚染水の海洋投棄に対して、強いステートメントを発表しました。
汚染水の海洋廃棄に対して『strong concerns』という言葉を選んでいます。
この声明の中で議長は、2021年7月に開催された直近のPALM(通称:島サミット)において、日本の首相が各国首脳に示した、「すべての関係者が検証可能な安全性を確保する」という確約を遵守するように求めています。
それを受けるかのように、日本の首相とされているものが7月4日にIAEA事務局長と面会し、安全性の評価を盛り込んだ報告書を受け取る、という儀式を行いました。報告書の中では、ALPSを経由した汚染水に関して『国際基準に合致する』としています。しかし、あれだけ悲惨な事故を起こし、十数年経っても解決策が見えない原発から排出される汚染水に対する、国際基準などというものはあるはずもなく、原子力を推進するIAEAと日本政府の思惑が生み出した詭弁と理解したほうが筋が通ります。
しかも、投棄している現場を隠すかのような海底トンネルの施工にも疑問を持たれている方が多いと思います。汚染水をトンネル経由させることには全く意味がないからです。福島大学の御用学者は「投棄する汚染水を毎日1年間飲み続けても、被爆の影響はかなり低い」などという曖昧なコメントをNHKに出す始末です。検証可能な科学などないのです。
日々の食事を島沿岸の魚類に依存している南太平洋の住民のみならず、海域で獲られる魚類は製品化されて世界中に広く流通します。ツナ缶などはその代表例でしょう。その魚が汚染された時、、、そして、一つの大きな水槽である海洋に汚染が拡散していけば、すべての海産物が食べられない未来が待ち受けています。もしくは、隠蔽された汚染物質を食べ続ける未来かもしれません。
IAEAの報告書に対しては、中国と韓国も強く反発する声明を発表しています。しかし、両国の原発も稼働中で、いつ甚大な事故が起こるかわからない綱渡りの状態です。ちなみに中国には51基、韓国には建設中を含めて26基の原発があります。日本政府と同様に両国政府も原発利権からの強力なロビーイングを受けていることが容易に想像できますから、今回のIAEA報告書に対する反発は国民向けのポーズと見るのが適切でしょう。この後、海洋投棄が始まっても外交上の問題などにはならないと想像できます。
隣国の台湾では今年の3月に40年の運転期間を終えた國聖原子力発電所の閉鎖を決定しました。日本でも40年超えの運転を認めることなく、順次廃炉にしていく、そして新規建設を認めない。これを国際基準にまで高めていく必要があると思います。